ANAの緊急降下(?)について




さて、2日連続で話題のニュースから深掘りしようかなと思います。

前回はこちら→『ジェットスター欠航、人手不足について

1万メートル緊急降下=空調系トラブルで-ANA機

今日の話題はこれ。また事故調査委員会(JTSB)が調査中なので、詳細は後々ですが、漏れ出ている情報を整理します。

ANA、空調系トラブルで緊急?降下

さて状況を説明すると

①サンノゼ発成田空港行きで、空調系統(おそらくPackだと思われる。後で解説)が一つアウト
②なんで壊れたかわからないし、成田空港にも1時間圏内だったので10000ftまで降下(なおこの記事によると、10分弱かけて降下した模様)
③10000ft降下後?もう一つのPackがアウト
④酸素マスクも出てない
⑤一応2系統ともPackが壊れたので緊急事態宣言して成田に無事着陸
⑥マスコミが騒ぎ立てる

って感じ。

まあ何はともあれ怪我人や死亡者が出なくてよかった。

通常通りの手順です。笑

twitter上でいろんなパイロットが指摘している通り、この記事の書き方だと

高度の高いところでBoth Pack Failになって、酸素マスクつけながら緊急降下(Emergency Descent)をしたみたいな書き方になってますね。もしくは操縦系統不具合で意図せず30000ftも降下してしまった表記になっている。

残念です。

今回は1系統故障→目的地近いし、念のために降りておくか→通常通り降下→そのあともう1系統壊れる

なので、酸素マスクは出てないし、不快感に襲われるようなピッチ(姿勢)では降下してないし、機内圧は10000ftまでしかいってないはず。

まあマスコミが航空事故みたいなセンセーショナルなニュースで、速報性が求められる時に、裏付けも理解もしないでとりあえず報道してしまうのはいつも通りなので、しょうがないですかね。(いや、呆れてるんですよ。僕。)

実際に今回は30000ft弱を10分で降下でしょ?-3000ft/minちょいとかでしょ?飛行機飛ばしてたらわかりますが、全然緊急降下じゃない。笑
いつも使うレートです。

…といってもピンとこないと思うので、実際に計算すると

・IAS300ktで降下(GS450kt)→7.5nm/minの進出距離
・7.5nm=6076✖️7.5nm=45570ft
・3000ft/45570=tanχ
・χ=3.77度

ってことで、普通っす。笑
(ちなみにここら辺の単位計算が出てこない人は、youtubeで解説してるので、よければ見てね笑)

まあ、3度パスでしか降りたことがないパイロットがいるのなら、ちょいと深めに思えるかもだけどね笑(基本は3度で降ります)

ちなみに『いや、高高度ではIAS一定じゃなくてMach一定での降下だろ』とかいうツッコミはやめてね。計算の簡易化のためです。笑

Packって?

前にPackがFailって書きましたが、このPackってなんぞやと。

簡単に言うとエアコンです。

旅客機の中にある空気は、基本エンジンから取り入れた(綺麗な)空気をこの Packってところで、最適な温度に熱交換して調節して、機内に供給されています。

ちなみにB787はエンジンから空気を取り込むのではなく、外部から直接Inletに入れているみたいですね

飛行機って少しずーつ機体から空気が漏れ出る風船みたいなものです。
この風船に空気を供給し続けないとしぼみますよね?

なのでこのPackが、飛行機っていう風船に空気を供給しているんですね〜

ね、重要でしょ?

これが1つ壊れても大丈夫なように、大体どの飛行機も2系統ついているんですが、今回は2系統とも壊れてしまったと。

これらは1系統ごとに繋がっているパソコンも違えば、電気供給源も変えているのが普通なので、基本そんなにどっちもアウトにはならないんですけどね。

もし空中でPackが2系統壊れたら?

さて、今回のANAの議題とは違いますが、もし空中で2系統とも一気に壊れてしまったらどうするのか?

会社や機材によって瑣末な手順の違いがありますが、基本空気系統の故障は緊急降下(Emergency Descent)です。

例えば、機体のどこかに穴が空いて、機内圧が急激に下がったとかね。

その時の降下スピードたるや、今回の比ではない。今回が-3000ft/minだとしたら、-7000~8000ft/minは最低でも出すでしょう。

スピードブレーキをフルでひいて、安全な高度もしくは10000ftまで下がります。(松本上空みたいに山が高いところは、MEAぐらいまで下がりますね。)

ちなみにその訓練は、多分どのパイロットも行なっています。怖いと思うけど、安心してね。

緊急事態宣言についての世間とのズレと、事故調査委員会について

ってことで、話がそれました。

今回の件は重大インシデントとなり、事故調査委員会の調査が入っています。

…っていうと、すごく大げさで恐怖心を煽る文面ですが、別に今回のパイロットはしっかり手順通り(いや、手順以上の判断)をして怪我人どころか酸素マスクも出さずに済んでいるので、素晴らしいなあと。

世間と専門職の間で見識が違うのは当たり前なので、別になんとも思いませんが

・緊急事態宣言→どんな時に出すのか?宣言の違いは?(緊急通報と遭難通報の違い)とか

・事故調査委員会が発足されるのはどんな時で、どんな時に重大インシデント認定されるのか

みたいなことは、よくマスコミが世間を煽るわりに世間的な認識と変わってくるところなので、このブログを見ている人だけでもいいから正しい認識を持ってもらいたいなあと思う次第であります。(ちなみに緊急事態宣言については別記事であげますね)

関連→『飛行機が壊れた!さあどうする?

ではまた




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